デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital transformation)とは、「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という少し曖昧な概念です。
近年、このデジタルトランスフォーメーションの導入が注目されておりますが、概念、具体化、事例などについて
ご紹介致します。
【目次】
1:「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の概念と発祥
2:「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の具体的な定義
2-1:IDC Japan社の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の定義
2-2:ガートナー社の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の定義
2-3:日本の経済産業省における「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の定義
3:なぜデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されているのか?
4:日本におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進内容
5:デジタルトランスフォーメーション(DX)における課題
5-1:経営層の課題
5-2:現場の課題
5-3:危機感が希薄
5-4:既存システムのブラックボックス化
6:まとめ
1:デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念と発祥
デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital transformation)とは2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したのが発祥です。
「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」
という内容は、この時点では曖昧で抽象的な概念で、具体的な定義はされておりませんでした。
しかし、その後、あるIT専門調査会社がこの概念をビジネス向けにアレンジを効かせて
明確に定義をしていくのです。
2:デジタルトランスフォーメーション(DX)の具体的な定義
エリック・ストルターマン教授が提唱した後、
IT専門調査会社の「IDC Japan社」や、「ガートナー社」が各社で概念をアレンジして、定義しました。
さらに、2018年に日本では経済産業省も定義をするため、ガイドラインを策定しました。
2-1:IDC Japan社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の定義
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立することを指す。
(IDC JAPAN Webサイトより抜粋)
ここでの「第3プラットフォーム」とは、クラウド化やビックデータ/アナリティクス・ソーシャル技術・モビリティー等を指しています。
そして、「DX成熟度」までも個別に考案して、DXの成熟度を測定する調査方法論やその調査結果を具体的に示しています。
2-2:ガートナー社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の定義
企業内のIT利用は三段階存在し、下記の様に提唱しています。
1st step:業務プロセスの変革
2nd step:ビジネスと企業、人を結び付けて統合する
3rd step:人とモノと企業もしくはビジネスの結び付きが相互作用をもたらす
そして、この3rd stepへの改革こそが、「デジタルビジネストランスフォーメーション」と定義しています。
2-3:日本の経済産業省が掲げるデジタルトランスフォーメーション(DX)の定義
日本の経済産業省も、令和元年 7 月に発表した「DX 推進指標」とそのガイダンスにて、下記の様に定義してます。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
結論端的にまとめてみるとこの様になります。
目的:ビジネスの競争に他国に負けてしまうからこのままではヤバイから変わろう!!
方法:データとデジタル技術を活用していこうね!古いシステムは変えていこう!!
結果:古いビジネスモデルから変革できて、新しいビジネスできるよね!?
つまり、DXとは「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」とただの抽象的な概念でしたが、そこに「各国が取り入れ始めている」事と、日本国内では「2025年の壁」と言う問題が合わさり、
それを解決するための方法論と見なされてきているのです。
3:なぜデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されているのか?
「デジタルトランスフォーメーションができないと、将来的に大きな経済損失を生み出してしまうから」です。
経済産業省は、DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~というレポートで、
2025年以降、デジタルトランスフォーメーションが実現されていない場合、政府は最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が起こりうると発表しております。
逆にデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現ができた場合は、2030年実質GDP130兆円超の押上げられる可能性があるとしております。
経済損失が起きるその理由は、
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・現在使用している既存システムの老朽化。
・事業部門ごとに構築されたシステムによる、横断型のデータの不活性。
・IT人材不足。
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これにより、膨大のデータの利用に対応できず、他国との競争から敗退してしまうからです。
この様な事が見込まれており、多大なる経済損失を避けるべく国が介入するほど注目されているのです。
つまり、世界で闘う土壌になるかどうかと言う危機感を抱かなければならないほど、
対応が急務となっているのです。
4:日本におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進内容
日本国内では、経済産業省がデジタルトランスフォーメーションを牽引していく姿勢を示しています。
2019年(平成30年) 5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設立。
研究会では、ITシステムのあり方を中心に、日本の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していく上での現状の課題整理や、対応策の検討を行いました。
その活動の中で、同年の9月に『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』 として報告書を取りまとめました。
大まかな内容は、
「DXしなければ2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるし、
デジタル競争の敗者になっちゃうから、大変なのはわかるけど頑張って、日本全体でデジタルトランスフォーメーションしましょう!」
ということでした。
こちらのDXレポートの特筆すべき点をまとめると、下記のような内容です。
【2025年の崖の問題がある】
・多くの企業の既存システムが、事業部門ごとに構築されてたりして全社横断したデータ活用ができていない。
・過度なカスタマイズなどで複雑化・ブラックボックス化している。
・既存システムの問題を解決するには、業務自体の見直しも求められるが、現場の抵抗も大きい。
【DX実現した場合】
・実現したら、2030年実質GDP130兆円超の押上げができる!
・既存システムのブラックボックス状態を解消できる!
・人材・資金を維持・保守業務から新たなデジタル技術の活用できる!
です。
*2025年問題について詳細をこちらの記事にまとめておりますので、ご参照ください。
この「DXレポート」の内容を踏まえて、さらに同年の12月、DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で経営者が押さえるべき事項を明確にすること、取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用できるものとすることを目的として、
『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』(DX推進ガイドライン)
を策定し公表しました。
5:デジタルトランスフォーメーション(DX)における課題
では、なぜこれほどまでに注目され、推進もしているのに実現ができないかと言うと
課題が多く存在しているからです。
今回ご紹介する他にもありますが、項目を絞ってご紹介いたします。
5-1:経営層の課題
経営層は少なくとも「デジタルは重要だ!」的な感覚はあるので、デジタル部門を設置するなどの取組が
見られるが、実際のビジネス変革にはつながっていない。
よって、社内に「デジタル部門」が設置されても、既存システムの問題点を具体的に把握し、どの様に克服していくか、経営層が描き切れていない事が問題である。
つまり上からの指令が出たところで、曖昧なプロジェクトになってしまうと言う現実がある。
5-2:現場の課題
従来のシステムを長年使用してきた会社の現場からは、変革への抵抗が見られる会社も少なくないであろう。
また、単純なるインターフェースの変化だけではなく、ビジネス変革にもなることから、
AIやロボットに職を奪われる可能性も出てくるのだ。
経営層側からの十分な説明が必要になってくるが、5-1に記述した「経営層の課題」より、
経営層側も具体的な理解ができていないと、説得ができないと言う関連性もある。
5-3:危機感が希薄
将来に対する危機感が共有がされておらず、デジタルトランスフォーメーションを取り入れた変革を関係者に理解してもらうことが難しい。
だが、2020年のコロナウィルスの流行により、既存の企業は自社のビジネスのあり方を半強制的に振り返る必要が
出てきており、今回の世界規模のウィルス感染が皮肉にもDXを推進する加速装置となると予想されている。
5-4:既存システムのブラックボックス化
基幹系システムに置いては、2025年の時点で21年以上継続している物が6割になると予想されている。
企業の部門毎でオリジナルでのシステムが制作されてきた。
会社で横断的なデータ活用を行うには既存のシステムにメスを入れる必要がある。
しかし、オリジナルで制作されてきたシステムなどは、継ぎ足しの様な改修やアレンジが加えられ、
且つ当時の担当者も既にいなくなってしまっていると言うのが現状である。
その様なブラックボックス化したシステムに手を入れるのは、非常に高い工数がかかる。
よってデジタルトランスフォーメーションを実行していく弊害になってしまっている。
関連本:みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」
この課題を現実に体感した有名なプロジェクトが、「みずほ銀行システム統合」。
本書は2025年問題の具体的な失敗例した例を取り上げているので、これからのデジタルトランスフォーメーションの変革をしていく企業の失敗例として非常に参考になる書籍です。
6:まとめ
デジタルトランスフォーメーション(DX)の概要、課題、注目されている理由などについてまとめてみました。
利便性が高く、現在ではデジタル無しではビジネスが成り立たない企業が多く生まれておりますが、
提供する側はこの凄まじく早い変化に食らいついていかなければならず、
改めてデジタルを駆使したビジネス競争の過酷さを知る事ができました。
2025年に日本の多くの企業がデジタルトランスフォーメーションを駆使して、世界と張り合える状況になっている事を祈ります。
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